優しい手①~戦国:石田三成~【完】
それから部屋には景勝、景虎、三成と兼続が来て、特に三成とは少し顔を合わせづらかった桃は景虎と景勝の間に座ると、二人の頬を少し赤らめさせた。


「桃姫…その…父上のお隣の方が…」


「え、ここに座りたいの。駄目?」


「桃、こっちに来い!」


手を引っ張って立たされると、無理矢理政宗の隣に座らされ、笑顔で溢れる政宗に笑いがこみあげてくる。


「政宗さんっていっつも元気だよね。疲れてないの?」


「奥州と越後は近いのだ、これしきで疲れはせぬ」


皆で朝餉を取り、味噌汁を呑んでいると三成と目が合う。


…本当に気まずい気分だったのだが、三成が口角を少し上げて笑いかけてくれて、それで一気にほっとして食が進む。


「で、関が原へ向けてはいつ進軍するのだ?」


「甲斐の武田軍と合流したらすぐにでも発とう。織田軍は荒くれ者が多いからちゃんと作戦を立てないと」


――難しい話になってきて桃が黙り込むと、政宗が力強く肩を抱いてきた。


「川中島での出来事、幸村から聞いたぞ。夜叉姫と呼ばれているそうだな?どうだ、共に関が原へ来るか?」


「え、いいの!?」


「駄目」


「駄目だ」


――すぐに謙信と三成からの反論に遭い、政宗は唇を尖らせたが…確かに桃を連れていっては“飛んで火に入る夏の虫”状態。

最恐の男織田信長が桃を付け狙っている以上、共に連れて行くわけにはいかない。


「そっか…残念…」


「今度こそ来ちゃいけないからね。わかってる?」


「…はい…」


渋々返事をして膳を下げてもらうと、皆で茶を飲んでいる間政宗がべたべたと桃に触りまくる。



「政宗公」


「なんだ?お前のものじゃあるまいに」


「いや、桃は俺と契った。俺のものだ」


「…なに?!」



政宗だけではなく、景勝と景虎も驚きのあまり目を見開いて義父を…謙信を見つめた。


だが謙信は瞳を閉じて静かに茶を啜っている。


「父上…」


「まあそういうことだけど、その話は深く話すととんでもなく長くなるから今は戦に集中しよう。いいね?」


誰もが唖然となった。
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