優しい手①~戦国:石田三成~【完】
三成と深い関係になったことを皆に知られる形になった桃は逃げるようにその場から居なくなった。


「…貴公は諦めたのか?」


「だからその話は長いから…」


「かいつまんで話せ!」


――てっきり謙信の正室になるものとばかり思っていた政宗は意外と言わんばかりに三成を凝視する。


だが本人はようやく桃を手に入れたにも関わらず冷めた表情で、目を合せようとしない。


謙信と言えば…景虎と景勝も話を聞きたそうな顔をしていたので、仕方なくかいつまんで話すことにして、思いきりかいつまんだ。


「つまり私は諦めない。そういうことだから」


「…」


謙信と三成が視線を交わし合う。

そうしながら、当人同士が争っても無意味なことはわかっていて、

桃に選ばれたはずの三成も、桃に選ばれなかった謙信も、全てを桃の決断にゆだねていたので、それ以上何も言わなかった。


「俺が留守にしている間に色々あったようだな」


「それより血判状の話をしよう。家臣の前でやらないと意味がないんだけど君は誰を連れて来たの?」


「成実と小十郎を連れてきた。奥州の二本槍だ、文句あるまい」


――すると襖が開いて家臣の一人が兼続に文を差し出すと、それを兼続が謙信に手渡して、皆が注視する。


謙信はすぐに文に目を落としながら、苦笑した。


「父上?」


「北条からの文だよ。“今回は静観する”って。どうしたことかな、いつもはつっかかってくるのにね」


それを聞いた景虎が、戦国時代随一と謳われる美貌に笑みを浮かべて拳を床についた。


「俺が文を出しました。今回はこの景虎に免じて織田勢につかぬように、と」


「そっか…、苦労かけたね。大変だったでしょ?」


優しく微笑みかけられ、頬が熱くなるのを感じながら何度も首を振り、実父と実兄らを想う。


「きっとご理解くださったのです。お味方するようにお願いしたのですが無理でした。申し訳ありません」


「いや、これで十分だよ。じゃあ目下は近くにいるはずの徳川勢だね。関ヶ原まで顔を合すことがなければいいけど」


――桃との約束を思い返す。

必ず戻らなければ、と強く誓い、血判状を握りしめた。
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