優しい手①~戦国:石田三成~【完】
上杉謙信がついに起った――


その報はあっという間に知れ渡り、織田の連合軍に対し、上杉、武田、伊達が共闘するという血わき肉躍る対決に、血気盛んな大名たちが次々と謙信を噂話に持ち上げた。


『あの戦嫌いが…。どうやら正室に迎える姫君を織田と奪い合っているらしい』


『俺は織田は好かん。味方するなら上杉だ。軍神上杉謙信と共に戦えるのならば本望!』


――そんな噂話が全国に広まっていることも知らず、血判状に押印した謙信は家臣団を解散させ、だらりと上座の肘付で頬杖を突いていた。


「ああ肩凝った」


「謙信さん、見せて」


桃が人差し指を覗き込んでハンカチで血を拭いてやっている間に政宗が懐に手を入れて、布に包んだ何かを桃に見せた。


「桃、これを見てくれ」


「え、なに?」


上座から降りて政宗の前に正座すると、隻眼の端正で若々しい男は桃の太股を撫でながら膝に包みを置いた。


「すまぬ、今まで言えなかった。だがこれはそなたの運命。己で決めるがいい」


「え?」


――皆が注視する中…桃はその布を開いて、中で光るものを見た途端…絶句した。


「これ…、時空を飛ぶ石の欠片…?」


「そうだ。どうしたことかある日突然俺の部屋にあった。そなたの母御か父御のものだろう。それがあれば…元の時代に戻れるやもしれぬぞ」


――元の時代に――

オーパーツの回収と、両親と共に元の時代へ――


急に現実が目の前に開けて、桃は石から目を離すことができなかった。


だが…謙信も三成も幸村も…全員が厳しい表情をしていた。


「…お父さんとお母さんを助けて、渡して、元の時代に…」


「…我らが必ず織田から親御を奪還する。それからその後は桃、そなたが決めることだ。我らはそれに干渉できぬ」


「政宗さん…」


――突然、ふいっと三成が部屋を出て行った。

その所作にものすごく心細くなって、桃も立ち上がる。


「桃」


「謙信さん…待ってて、ちょっと三成さんと話してくるから」


元の時代へ。


帰るか留まるか…


どちらを選ぶにしても、血を吐くような決断。


揺れる。
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