優しい手①~戦国:石田三成~【完】
全身汗に濡れて、愛し合う。


桃が背中に爪を立てて声を上げ、三成は片時も桃を離さずに、愛の言葉を囁き続けた。


「愛している、桃…っ、離さない…!」


「も、駄目、三成さん、私も…っ」


このまま子を身籠って生んでくれたらいいのに…と思いながら、感情が昂って瞳が潤んだ三成の表情に桃が驚き、顔を胸に引き寄せた。


「なんで、泣いてるの…っ?三成さん、泣かないで…やだよ…」


「…すまぬ。桃、待っていてくれ。俺は必ず帰って来る。だから、言ってくれ…“愛している”と」


身体が弛緩して覆い被さってきた三成の身体を抱き止めて、桃は耳元で囁いた。


「愛してるよ、三成さん…」


「…ありがとう。桃…」


唇を重ねあい、息を乱し合い、愛を重ねあう。


もう何度も何度もそれを繰り返して、そして体力が事切れて桃も三成も寝入ってしまった。


そして朝…桃が目覚めた時、三成はもう居なかった。


「…行っちゃったの…?三成さんも?謙信さんも…!?」


慌てて起き上がって襖を開き、駆け出して大広間へと向かう。


城内はがらんとしていて、必死になって主と三成の姿を探し求める。


「三成さん?謙信さん!?」


「桃姫」


「え…」


声をかけてきたのは…景勝だった。


「景勝さん…どうして…」


相変らずの無表情な景勝が、乱れた桃の浴衣を正してやりながら片膝をついた。


「父上がお留守の間、俺があなたを守るようにと仰せつかりました。先ほど出立されたばかりです」


「そんな…挨拶もしてないのに…!」


駆けて馬屋のクロの元まで行ったが…クロも居なかった。


「…三成様がお乗りになっておられます」


「お園さん…清野さん…」


三成を想うお園と謙信を想う清野――


板挟みに遭う感情と、挨拶も交わせずに行ってしまった三成と謙信――


桃はその場に崩れ落ちた。


「私が桃姫様をお守りいたします。…謙信様の代わりに」


清野が言葉を振り絞る。

…本当は、ついて行きたかった。


「絶対無事に戻って来て…!三成さん…謙信さん…!」


叫んだ。
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