優しい手①~戦国:石田三成~【完】
三成と謙信が発ってから桃は水も食事も摂らず毘沙門堂に籠もっては祈り、部屋に戻っては眠って…


その様子に桃の身辺警護を任された景勝と清野が心配して、何とか薬湯を桃に呑ませようとしていた。


「何かお口になさって下さい。…謙信様がお帰りになってあなたがやつれていたらとても心配されますよ」


「…食欲ないの。お願い、放っといて…」


「…姫」


「え?…ん、ん、んっ!」


――清野の手から薬湯の入った湯呑を奪い、それを口に含んだ景勝が有無を言わさぬ強引さで桃を抱き寄せると、唇を重ねた。


…喉にゆっくりと薬湯が流れ込んできて、飲まざるを得ない状況に陥った桃は、状況にパニックになりながらも少しずつ薬湯を呑み込んで…

最後まで嚥下すると、ようやく離れてくれた。


「景勝さ…」


「食事は必ずお摂りになって下さい。でないとまた同じことをしますよ」


謙信とよく似た顔でそう凄まれると何も言えなくなって、拳を握りしめながら唇を震わせた。


「ごめんなさい…本当に心配なの」


「…父上は笑顔で出立されました。あのように高揚した父上を拝見したのは、武田信玄と対峙している時にしか拝見したことがありません」


「景勝さん…」


何とか無理矢理笑顔を作ったという態で微笑みかけてくれた景勝の手を握り、そして未だ心配そうにしている清野の手を握った。


「ごめんね、謙信さんのこと心配だよね…。清野さん…一緒に行きたかったんでしょ?」


「…いいえ…私はあなたをお守りすることが使命。謙信様がお帰りになった時にお声をかけて頂ければそれだけで幸せなのです」


少し頬を赤らめて俯き、また顔を上げた時は意思の籠もった瞳をしていた。


「ですのでお食事はお摂りになって下さい。お堂に籠もられる時は私が入り口でお守りいたします」


「ありがと…」


――無性に嫌な予感がする。


毘沙門天の像を照らし出している蝋燭の炎が揺れる度に、その不安は競り上がってきて桃を不安にさせる。


「大丈夫だよね?2人共…帰って来るよね?」


「もちろんです。父上は無敗の将。必ずや信長の御首を手にお帰りになります」


無理矢理笑顔を作った。
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