優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「雨が降る…」
快晴の中、謙信がそう呟いた。
先程まで見せていた茫洋とした表情は消え…その変化に重臣たちが俄かにざわめきだして、さらに謙信の周囲を厳重に取り囲む。
その時――
「五三桐の旗印が」
豊臣軍の旗印である五三桐。
もう秀吉の軍が目前に来ていることを知り、三成の手にじっとりと汗が滲んできて、先程謙信に渡した手紙の念押しをした。
「俺に何かあればそれを桃に。…頼む」
「…君の使命は無事に帰って来ること。桃の親御は殺されることはないだろう、人質だからね。でも君はあり得る。説得に失敗したらすぐに脱出を」
軍には加藤清正が従軍していると聞き、犬猿の仲である両者が顔を合わせてしまうといつも口論になる。
だが当の秀吉に会うにはまず清正などの重臣を捕まえて、陣まで連れて行ってもらわなければ、会えない。
「幸い徳川軍は牽制のみみたいだし、それに…私は敗けない。なんだろうね、この漲る力は…」
掌を見つめ、白皙の美貌の横顔は女と見紛うほどの美しい微笑が浮かんでいて、逆にそれが背筋が泡立つほど怖かった。
「殿がやる気になったのは、こういう状況にはなりましたが桃姫のおかげ!さあ殿、信長を懲らしめてやりましょうぞ!」
重臣を中心に威勢の良い雄たけびが上がり、それが波のように従軍する兵にも伝わって、地響きのように山を揺るがした。
――謙信が馬の腹を蹴って兵の間を駆け抜ける。
旗印は連合軍共通して毘沙門天の「毘」と「龍」の字。
共に合意して、仏の加護と本気になった龍の牙を味あわせてやろうぞ、と3者合意で決めた旗印。
謙信が駆けて、本来は越後でほとんどが農業をやっていた兵たちは腕を振り上げてその姿を拝むことができた喜びに打ち震える。
「毘沙門天がついている!謙信公がついている!」
――謙信の後ろを駆けながら曇り始めた空を見上げて、いやな予感が噴き出てきた。
…託した手紙には今後のことを全て書き記して、秀吉を説得できなかった場合…
戻れなかった場合…どうしてほしいかを書き記した。
「桃…」
戻る。
だから無事に帰った時…その手紙を見て、笑い話にしよう。
快晴の中、謙信がそう呟いた。
先程まで見せていた茫洋とした表情は消え…その変化に重臣たちが俄かにざわめきだして、さらに謙信の周囲を厳重に取り囲む。
その時――
「五三桐の旗印が」
豊臣軍の旗印である五三桐。
もう秀吉の軍が目前に来ていることを知り、三成の手にじっとりと汗が滲んできて、先程謙信に渡した手紙の念押しをした。
「俺に何かあればそれを桃に。…頼む」
「…君の使命は無事に帰って来ること。桃の親御は殺されることはないだろう、人質だからね。でも君はあり得る。説得に失敗したらすぐに脱出を」
軍には加藤清正が従軍していると聞き、犬猿の仲である両者が顔を合わせてしまうといつも口論になる。
だが当の秀吉に会うにはまず清正などの重臣を捕まえて、陣まで連れて行ってもらわなければ、会えない。
「幸い徳川軍は牽制のみみたいだし、それに…私は敗けない。なんだろうね、この漲る力は…」
掌を見つめ、白皙の美貌の横顔は女と見紛うほどの美しい微笑が浮かんでいて、逆にそれが背筋が泡立つほど怖かった。
「殿がやる気になったのは、こういう状況にはなりましたが桃姫のおかげ!さあ殿、信長を懲らしめてやりましょうぞ!」
重臣を中心に威勢の良い雄たけびが上がり、それが波のように従軍する兵にも伝わって、地響きのように山を揺るがした。
――謙信が馬の腹を蹴って兵の間を駆け抜ける。
旗印は連合軍共通して毘沙門天の「毘」と「龍」の字。
共に合意して、仏の加護と本気になった龍の牙を味あわせてやろうぞ、と3者合意で決めた旗印。
謙信が駆けて、本来は越後でほとんどが農業をやっていた兵たちは腕を振り上げてその姿を拝むことができた喜びに打ち震える。
「毘沙門天がついている!謙信公がついている!」
――謙信の後ろを駆けながら曇り始めた空を見上げて、いやな予感が噴き出てきた。
…託した手紙には今後のことを全て書き記して、秀吉を説得できなかった場合…
戻れなかった場合…どうしてほしいかを書き記した。
「桃…」
戻る。
だから無事に帰った時…その手紙を見て、笑い話にしよう。