優しい手①~戦国:石田三成~【完】
その夜、謙信は桃と2人で自室で盃を傾けていた。


「たまには晩酌に付き合ってほしいんだけど。駄目?」


「でもそれ飲んじゃうとすぐ眠たくなるし…」


「早く寝ていやなことは忘れた方がいいんじゃない?言っておくけど私は酒が好きだから毎晩飲むよ。付き合ってくれないんなら違う女子を呼んで…」


「つ、付き合うよ。だから駄目!」


盃を受け取ると一度持ち上げて軽く打ち合わせて、くいっと飲んだ。

途端に身体がぽかぽかしてきて、謙信が優しく微笑んでいる顔が歪みだす。


「おや、甘酒だけでそうなっちゃうの?桃、こっちにおいで」


「うん…謙信さんの身体、固い…」


「ふふ、やわらかい方がいいの?だったらもうちょっと太れるように努力するよ」


心臓の音が心地よくて、謙信の背中に腕を回して横向きに座ったままうとうととしてしまって、ついには瞼が落ちた。


「幸村」


「はっ、ここに」


すぐさま返事が返って来て襖が静かに開き、精悍な顔立ちをした幸村が中へと入って来た。


「桃を寝かしておいて。完全に眠るまで傍に居てやってね」


「御意」


そう言って盃を2つと徳利を1本、そして刀を手にした謙信が腰を上げたので、向かう先を知っている幸村は一応、訊ねた。


「どちらへ?」


「恋敵の所へ。少々勝手が過ぎるようだからね、懲らしめて来るよ」


何ら緊張感も持たないまま部屋を出て行ったので、幸村は桃を抱き上げると隣室の床が敷いてある部屋に移動して、寝かしつけた。


「ん、謙信さ、ん…」


「桃姫…、幸村です」


ころんと寝返りを打った拍子に胸元がはだけて胸の谷間が見えた。

戦馬鹿…そして純情馬鹿の幸村の血圧が一気に上がり、そろそと顔を近付ける。


「…桃姫…俺はあなたを…愛しています…」


長い睫毛が美しく、少し伸びた黒髪が艶やかで、可憐な唇から目が逸らせなくなった幸村は…


禁忌を犯した。


「ん…、ん、ん…」


「ああ…、甘い…。桃姫…!」


覆い被さって、がむしゃらに舌を絡めた。

時折跳ねる桃の身体が愛しくて、一瞬の極楽の時に、さらに想いが募って行った。
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