優しい手①~戦国:石田三成~【完】
もう、謙信とも三成とも一緒には眠らない――

朝方まで眠気と戦って必死に起きていたのだが、数時間は眠った。


が…謙信のことはどうしても気にかかる。

言葉でちゃんと伝えなければ、踏ん切りがつかない。


「私ちょっと行って来るね。横になってていいよ、手…繋いでてくれてありがと」


「わかった。桃…あまり謙信を追いつめるな。謙信とて独りになりたい時もある」


「うん…行ってきます」


――隣の自室には戻って来なかった。

なので、謙信が独りになりたい時の部屋へ行くと…まだ朝方だというのに、幸村が部屋の前に座っていた。


「幸村さん…」


「桃姫…殿は今お休みになっておられます」


「駄目なの。今すぐ会いたいの。お願い、会わせて…!」


押し問答をしていると、中から静かな静謐の声。


「幸村…いいよ、入れてあげて」


「…はっ」


幸村が襖を開けて、桃は胸がはち切れんばかりに緊張しながら中へと入る。


謙信は…まだ布団に丸まっていて、肩ひじをついてこちらを見ていた。


「早いね、どうしたの?」


「どうしたって…昨日からずっと謙信さんに会えなかったんだよ?だから…」


「でも近いうちに“ずっと会えなくなる”んだよ?少しずつ慣らしておかないとお互いつらいからね」


ぼろっと涙が零れた。


謙信なりの気遣いと優しさ――


確かにそうだ、近いうちにもう“絶対”会えなくなる。

手を離したのは、自分なのに――


「っく…、う…」


「悪いけど三成に慰めてもらって。君の親御は必ず私が救い出してみせるからね、それだけは約束するよ」


「そんな…っ、謙信さ…」


「記憶が戻ったって聞いたよ。だからといってどうなるわけでもないけど、君の憂いがひとつ消えたのは確かだ。あとは全て…私が消してあげるから」


そう言って寝返りを打ち、背中を向けた。


急速に心の距離が広がる――

謙信が突き放す――


「謙信さん…私…謙信さんのこと、今でも…」


「それ以上は言わなくていいよ。君を幸せにできなくてごめん。後は全て…私に任せて」


幸村から、連れ出された。
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