優しい手①~戦国:石田三成~【完】
桃が泣きながら戻って来て、もううっすらと察しはついていたのだが…三成が確認を取る。


「桃…元の時代へと帰る気なんだな…?」


「…ぅ、ごめんなさ、ごめんなさい…っ!」


泣きじゃくって言葉を詰まらせる桃の身体を抱きしめて、胸に顔を埋めさせた。


「どうしてそのような決断を…。どうしてここに残ってくれない?」


「どちらかを選ぶなんて…無理だよ…!私は、2人共、大好きなの…!私が全部、狂わせてる…!だから戻るの、止めないで…!」


事の重大さに景勝と景虎も駆けつけてきて、桃の背中や肩に触れて、安心させようとした。


「父上もおつらいのです…。あなたを遠ざけてしまうのも仕方のないこと」


景虎が慰めるが、景勝は黙ったまま。

謙信の性格を熟知している景勝は…このまま桃を遠ざけて、互いを傷つけまいとしている謙信の配慮に気付いていた。


「でも私…っ、こんなに、つらいなんて…っ」


「…桃…俺も全力を賭する。そなたの親御を約束通り見つけて…そして元の時代へ返してやる。それが、俺と謙信がそなたにしてやれる…最後の愛情だ」


――ついに三成の口からも、別れの言葉が出た。


…引き留めてほしいわけではなかった。

そうではなかったけれど、結局…全員、傷ついてしまった。


「っぅ、謙信さん…、三成、さん…!」


皆がそっと部屋を出て行く。

背を丸めてまん丸になって桃は泣き続けて…


そして泣き疲れた時、部屋に入って来た者が在った。


「まだ泣いてるの?君は本当に泣き虫だね」


「っ、謙信さん…っ!」


「君以外の、私だけの天女を授けてもらえるように毘沙門天に祈ってきたよ。さて、願いを叶えてもらえるかどうか」


「そんな…っ、やだ…!」


隣に腰を下ろした謙信が、優しい瞳で見つめ、桃の頭に大きな手が乗った。


「私や三成のことをできれば忘れないでね。歴史に名を残している人物…ということだけじゃなくて、君を愛した男たちが居たことを、忘れないで」


「謙信さん…、忘れないよ、ずっとずっと…!」


これ以上はないという力で抱きしめられて、これ以上はないという力で、背中に腕を回して抱き着いた。
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