優しい手①~戦国:石田三成~【完】
天守閣に1人…ぼんやりと夕陽を見つめて、気持ちの整理をつけた。


…2人の男のどちらかを選べなかった自分。

どっちつかずで今まで来てしまったけれど…もう、諦めなくては。


「今日から1人で寝れるように頑張らなきゃ。大丈夫だよ桃。大丈夫…お父さんとお母さんを見つけて、帰ろう」


自分で自分を勇気づけて、思いきり両の頬を叩いて気合いを入れた時、それまでずっと桃を見守っていた幸村が声をかけた。


「夕餉のご用意が整いました」


「部屋で1人で食べます。こんな顔じゃ…皆に笑われちゃうから」


手鏡に写る顔は…目は真っ赤で腫れ上がっていて、かなり不細工だ。

えへへ、と笑って、まるで兄のように慕っている幸村の手を握ると、ほんのり顔が赤くなった。


「幸村さん、一緒にご飯食べようよ。駄目?」


「い、いえ…ではありがたく」


――そのまま手を繋いで自室の前で立ち止まった。


「私…部屋を替えたいの。隣は謙信さんの部屋だし、さすがにもう…それはつらいから」


「そうですね…では兼続殿に相談して来ますのでお部屋でお待ちください」


幸村の細い身体が見えなくなるまで見送って中へ入ると…


「きゃっ!?」


「その反応はひどいぞ。…1人で夕餉を摂ろうと思っていたんだろう?俺が付き合う。…すごい顔だな、ふふ」


「ひどい、今笑った!?でも…三成さんありがと、幸村さんも一緒だけどいいよね?」


「ああ、構わぬ。…謙信はまた堂に籠もっているらしい。飲まず食わずらしいぞ」


…三成は傍に居てくれるが、謙信は逆だ。

自分から離れよう離れようとしていて、それがすごくつらい。


三成が居ない間、抜け殻になった自分の傍に何か月もずっと傍に居てくれたのに――


「…嫌われちゃったかな…」


「むしろ逆だ。居なくなるとわかって、余計に募る想いもある」


三成もまた同じ想いで、桃が隣に座ると…大きくて、優しい手に手を重ねた。


「居なくなるまで…傍に居てね。三成さんと謙信さんの思い出、沢山作りたいの」


「…わかった。ずっと傍に居てやる。ずっと」


指を絡めてくれて、また涙が零れそうになった。
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