優しい手①~戦国:石田三成~【完】
三成に手を引かれて真っ赤な着物と真っ白な打掛を着て現れた桃に謙信の瞳が和らぎ、政宗が興奮した。


「おお、桃っ、何やら色気が増したな!俺の膝に来い!」


「駄目だったら。桃、こっちにおいで」


三成を気にしながらも差し伸べられた謙信の手を取り、上座に上がって隣に座ると、また軍議が再開される。


「尾張の秀吉公の軍が盾となり、織田軍は東へ攻め込むことができぬ様子。これを機に攻め込んでは?」


「うーん…あそこまで兵を引きつれて行くのは骨が折れるんだよね。できれば誘い込みたいんだけど」


「秀吉様は信長を止めることができても討つことはできぬ。信長の止めは謙信公の手で」


三成は記憶が戻ってから頻繁に尾張の秀吉と連絡を取り、代理として手腕を振るっていた。

甲斐の弾正も交え、東を席巻しているのは上杉軍。

時折徳川軍がちょっかいを出して来るが、何のことはない。


「で、清野たちはどうなってるの?」


「軒猿の報告によれば3人とも安土城にうまく潜り込んだ様子」


兼続が報告をして、桃がほっと息をついた。


「よかった…無事なんだね。あんまり無理しないといいけど」


「そうだね、真田十勇士は優秀だから大丈夫。むしろ問題は清野かな」


…清野のことを案じる謙信に対して桃がちょっと顔を曇らせて、薄化粧を施した桃をずっといやらしい目つきで見ている政宗のことが気にかかって仕方のない三成が腕を引いて立ち上がらせた。


「なんだ?」


「ちょっと付き合え」


そのまま連れ出されてぽかんとしていると、謙信が頬をかきながら解散を命じた。


「じゃあ今日の軍議は終わりにしようか。解散」


号令を受け、重臣たちが全員退出するとうなだれている桃を膝に乗っけて顎を取り、上向かせた。


「どうしたの?冴えない表情をしてるね」


「…ううん、清野さん、大丈夫かなって…」


「嘘は駄目だよ、私が清野を心配するのがいやなの?はっきり言ってごらん」


優しい瞳――

昨晩はあんなに猛っていたのが嘘のような静かな瞳をしていて、背中に腕を回した。


「ううん、我が儘な自分がいやなだけ」


どちらも欲しいなんて――
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