優しい手①~戦国:石田三成~【完】
政宗を空いている部屋に連れ込んだ三成は、ふてくされた表情の政宗から非難されていた。


「せっかく桃の艶姿を鑑賞していたというのに…何故男から部屋に連れ込まなければならぬのだ!」


「政宗公、例のものは持ってきたのか?」


――時空を飛ぶことのできる石。

実は関が原での一件からこっち、政宗はその石を持ち歩いていた。

いつ桃に渡そうかと考えている間に三成が行方不明になってしまい、桃の心が空っぽになってしまって…


「何故この石のことを気にするのだ?」


「…いつ桃に返すつもりだ?」


「親御と再会するまでは返さぬつもりだが。……桃は元の時代に帰るつもりだと謙信から聞いたぞ。そなたら2人とも木偶の坊だな、“ここに残りたい”と思わせることができぬとは」


ごろりと横になって、隻眼の左目が黙り込んだ三成を見つめて、欠伸をした。


「相変わらず謙信と桃を奪い合いしているそうだな。謙信の正室に収まっていればこの時代へ残ったかもしれぬのに」


「俺が戻って来なければよかったと言いたいのか?」


にらみ合っていると、2人を心配した桃がひょこっと顔を出して、さらに後ろから謙信がひょこっと顔を出して、その仲睦まじさに三成と政宗が仏頂面になった。


「何の話?私も混ざりたいなあ」


「私も!政宗さん、愛姫さんは元気?」


「なに?愛の話はするなとあれほど言ったはずだぞ!」


隣に座った桃の膝に無理矢理頭を乗せて膝枕を堪能しつつ、三成と謙信に対して自慢げに鼻を鳴らした。


「関ヶ原の件の直前にな、桃は俺の右目を見たのだ。つまり俺も桃を正室にと望んでいるのだ。忘れてはいるまいな」


「しつこいなあ君も。桃が1番愛しているのは私だよ」


「いや、俺だ。そうだな、桃」


膝があたるほど3人から詰め寄られて真っ赤になる桃をからかいたくて仕方のない3人は、久々の明るい雰囲気に内心胸を撫で下ろしていた。


やっぱり桃には笑顔でいてほしい。


いつか見れなくなるとわかっていても、直前までは…傍に居てほしい。


「幸村さんっ、助けて!」


部屋の隅に控えていた幸村もまた同じ思いで、桃のためにゆっくりと腰を上げた。
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