優しい手①~戦国:石田三成~【完】
“清野が信長の愛妾の地位に収まった”


その報を軒猿から受けた謙信はため息をついた。


「いよいよ親御の救出に王手がかかりそうだね」


「…愛妾って…どういう意味?」


この報を受けた時、謙信の部屋には三成、兼続、景勝、景虎、幸村が集まっていて、“愛妾”という響きに顔が曇り、膝の上でぎゅっと握りしめられている拳を謙信が指でなぞった。


「書いて字の如く、だよ。詳しく説明した方がいい?」


「…ううん、いい。清野さんにつらい目に遭わせちゃって…申し訳ないよ」


さっきまでころころと笑っていた桃の表情が曇り、皆が口を閉ざす。


妾…ひいては側室の地位に召し抱えられたとも捉えられるし、そうなれば持ち帰る情報量は今までの比ではない。

一定の距離ごとに軒猿を配置しているので情報の伝達速度は速く、信長から聞きだした情報が日々謙信の元に入って来る。


「清野はくノ一だからうまくやってるよきっと。それよりも君は親御ともうすぐ会えるかもしれないんだよ。喜ばないの?」


「そうだぞ桃。…元の時代に帰りたいのだろう?もっと喜んでもらわねば我らの努力が水の泡と化してしまう」


――愛している男たちがこうして背中を押してくれているのに…


一向にそれを“嬉しい”と感じることができずに桃が俯くと、景勝が景虎と兼続、幸村の腕を引っ張って無理矢理部屋の外に出させた。


「おや、気を使ってくれているのかな。聡い子だねえ」


「謙信様、失礼いたします」


そう声をかけてきて中へ入ってきたのは…全員分の茶と茶菓子を持ってきたお園だった。


…謙信に、というよりも…お園と目を合せようともしない三成のことを何度も盗み見して気にかけてもらおうとしている様子がまた桃の態度を硬化させて、そうすることがベストだと思っている三成はお園が退室するまでそんな態度を取り続けた。


清野とお園…

謙信と三成を愛している女たちの想いと決意が痛いほど伝わって来て、ため息をついた。


「清野のことは気にしないで。自ら申し出たことだからね」


「お園のことも気にするな。俺には…そ、そなただけだ」


「あれ、よくのたまったね私の前で」


呆れ返り、笑った。
< 502 / 671 >

この作品をシェア

pagetop