優しい手①~戦国:石田三成~【完】
皆が軍議に出てしまって一人になった桃は独りでバッグの前に座り、元の時代から持ってきたものの整理をしていた。


これを置いて行ってしまえば、また歴史が狂う。

これがオーパーツとなってしまうかもしれないので、自分が関わったものは全て持ち帰らなければならない。


「…これは…無理だなあ」


謙信が贈ってくれた立派な打掛。

そして三成にハンカチをあげたことを思い出した。


あれも返してもらわないと、オーパーツになってしまう。


「…切ないな。だけど戻らないと…。お父さん、お母さん…」


呟いていると、軍議の主要でもある三成が戻って来て、桃を驚かせて慌ててバッグのファスナーを閉めた。


「み、三成さん!?どうしたの?」


ただ黙って目の間に座り、口元はきゅっと引き結ばれていていたく真面目な顔をしている。

元々表情豊かな方ではないのでそれは気にならなかったが…三成を見ているとどうしてもお園の顔がちらついてしまうので、髪をいじるふりをして視線を落とした。


「…まだお園のことを気にかけているのか?」


「ううん、私が帰ったら三成さんの傍に居てくれるのはお園さんだと思うから…大切にしてあげてね」


「…なに?」


「三成さんって結婚して子供も生まれるんだよ。謙信さんは…独身でいるって言ってたし、これで史実通り!相手はお園さんだといいね」


空元気が空回り、桃の目に入ったのは膝の上に置かれていた三成の拳が震えている様子。


…一瞬殴られるのではないかと思って身を竦ませると、


「…っ、三成さん、離して…!」


「俺は妻など取らぬぞ。謙信も同じことを言ったと思うが、そなたしか妻には迎えたくない」


「…でもそんなの苦しいだけだよ。私だって元の時代に帰ったら彼氏を作って楽しい毎日を過ごしたいよ。幸せになりたいから…」


耳元で三成の震える吐息が聞こえて、激高を何とか抑え込もうとしているのがわかって、宥めるように三成の背中を撫でるとなおさら強く抱きしめられて苦笑した。


「謙信ならいいのか?条件は同じにしろと言ったはずだぞ」


別れはもう近い。

自分の痕跡を消し去らなければ。

…戻らなければ。
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