優しい手①~戦国:石田三成~【完】
矛盾している自覚はあった。

どっちつかずだからこそ戻ると決めて、離れようと決めたのに…


「離さないよ。君が離れていこうとすれば、また同じことになる。それをわかってないみたいだね」


――ぎゅっと優しく手を握られて、白い謙信の手に視線を落とした。


三成も謙信も…離してくれない。


そしてそれを喜んでいる自分も居る。


…馬鹿みたいだ。

一喜一憂してはまた傷つけて傷ついて、空回りするばかりだ。


「…三成さんは“元の時代に帰ることは許してない”って言ったよ」


「へえ、じゃあ私が同じことを言えば君は喜ぶの?言ったって帰るんでしょ?」


「…そう、だけど…」


「じゃあ虚しいだけでしょ。やっぱりあの打掛は燃やすことにするよ。君にとてもよく似合ってたけど、ま、仕方ないよね」


…この男は本気でやってしまうつもりだ。


あの打掛は一国が滅ぶほどの値打ちがあり、それを惜しげもなく贈ってくれて喜んでくれた謙信。


謙信と繋がっていた証拠。


「…やだ」


「え?」


「燃やさないで。そんなことするのなら…持って帰るから」


ふっと笑う気配がして顔を上げると…謙信がようやく微笑んでくれた。


「そう、それはよかった。さあ、もう行って」


――そしてやっぱり少し突き放すような態度を取られて、桃はその場所から動けなくなった。


…いや、動きたくなかった。


三成と一緒に居る時も感じるけれど…謙信とは特別な縁があるように感じていた。


「ここに居ちゃ駄目?」


「居たいの?どうして?」


毘沙門天の像に向き直り、振り返らない謙信の隣に移動するとまた袖を引っ張って視線を向ける。


「ここに居たいの。駄目?…呆れた?」


「そうだねえ…」


そうやってまた焦らされて、両膝をついて立ち上がると、上の空の謙信の細くもしなやかな身体を抱きしめた。


「今でも好きなんだよ。でもお別れしないといけないの。どうして三成さんも謙信さもわかってくれないの…?」


「理不尽だから。誰も幸せになれないなんて…君はどうかしてる」


…正論だ。

だが、離れなかった。
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