優しい手①~戦国:石田三成~【完】
その日の夜、謙信は未だ重臣たちと長い間軍議を続けていて、未だに1人で眠ることのできない桃が天守閣に登ってまん丸の満月を見上げていた。


「お父さん、お母さん…満月見てるかな。ひどいことされてないかな…」


「桃」


涙ぐみそうになった時声をかけられて振り向くと…いつの間に入り口に立っていた三成が隣に腰かけてきた。


「また走ってきたんだろう?」


「ごめんなさい、でもやっぱりじっとしてられないから…」


三成も軍議からは抜け出せなくなってきている。

尾張の秀吉の代理なのでその発言力は大きく、また秀吉と密に連絡を取り合わなければならないので日々密書を書いては互いの心境を伝え合っていた。


「桃、近いうち俺が最も頼りにしている男がここにやって来る。勇ましい男だ。会ってやってくれ」


「うん。誰かなあ?ふふ、歴史上の人物に決まってるよね。でもあんまり触れ合うと歴史が…」


「もう気にするな。これ以上歴史が狂ったとしてもそなたのせいではない。そなたは戻ることだけを考えろ。…不本意だが応援してやる」


――月灯りに浮かび上がる三成の少し冷淡でいて怜悧に見える美貌。

シャープな顎のラインは相変わらずで、謙信のやわらかい美貌とは対照的にいつも怒っているように見える顔につい笑みが沸く。


「まだ反対してるの?」


「これからもずっと反対するとも。謙信は違うのか?」


「うん…絶対に言わないよ。べ、別に言ってほしいってわけじゃないんだけど…なんかちょっと悲しいかな」


また月に目を遣っていると、桃の身体がびくっと揺らいだ。


…三成が、長い指で首をなぞってきたからだ。


「触れるのは無しだったか?」


「…うん…だ、め…」


――急に唇を重ねてきた三成に驚いた桃はすぐに入って来た舌の感触にまた身体を震わせながら身体に力を込めた。


「力を抜け、桃…」


「駄目、三成、さ…」


強引な三成の行動と言葉についほだされててしまう。


「そなたが欲しい」


「駄目、駄目だってば…」


「もうそれは聞き飽きた。疲れ果てて眠たくなるようにしてやる」


三成の目元が緩む。

桃の気も…
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