優しい手①~戦国:石田三成~【完】
良い風を受けて気持ちよさそうに走り、桃が笑顔を弾けさせた。


「越後ってすっごくいい所だよね。私、元の時代に戻ったら旅行に行ってみよっかな。お城の跡も見に行きたいし」


「…桃姫はやはりお帰りになるのですか?」


「え…、うん、だって…私、ここの人間じゃないし…」


それっきり無言になって土手の上を駆けのぼると、そこでクロから降りて休憩を取った。


「そろそろ雪も降り出すんでしょ?」


「はい。ですが雪が降り出すと戦はできません。ここは天然の要塞になるので、敵軍が山を越えることができないのです。それまでに決着をつけなければ…」


あと1か月もない。


桃とこうして毎日走ることも、笑いかけてくれることも、話すことも…全てできなくなる。


「拙者はてっきり桃姫は殿のご正室になるものと…」


「…うん、最初はそう思ってたんだけど…やっぱ無理なんだよね。ほら、私馬鹿だから、ここに残ったとして元の時代にどれだけ影響がでるかってあんまり深く考えてなかったから」


膝を抱えて俯きがちな桃の隣に腰かけ、元々女子と話す機会など滅多に持ったことがないので必死に言葉を考えていると…


「きゃっ、蛇が…っ」


「!桃姫!」


緑色の蛇が桃の親指に噛みついていて、すかさず刀を抜くと首を切断し、頭を取って放り投げると桃を抱きしめて傷口を唇で吸った。


「毒蛇ではありません。よく傷を見せてください」


じっと傷口に視線を注ぎ、やはり毒蛇ではないことを確認して顔を上げた時…


桃の唇と唇が、触れ合った。


「あ、ご、ごめんなさ…」


「…桃姫…!」


顔を赤くした桃に、猛烈に激情が迸った幸村はそのまま顔を寄せて行って今度ははっきりと唇を奪った。


「ん、ん…、幸村、さ…っ」


「桃姫…拙者はあなた様を…愛しています」


「え、ちょ、ん、ん…っ」


あの夜の時のように舌を絡め、情熱が伝わるように気持ちを込めて深く口づけをすると、桃の身体から力が抜けてゆく。



「お許し下さい。拙者はずっと…桃姫をお慕いしていました」


「……ありがとう、幸村さん…」



一生に1度の告白――
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