優しい手①~戦国:石田三成~【完】
幸村が秘めた想いを打ち明けてくれて、不器用ながらも心のこもった口づけをされて、それを無下に断れない桃はしばらくされるがままになっていた。


本当にそれ以上のことをしてこない。


ただ息もできない位に何度もキスをされて、次第に桃の身体も熱くなってきて、そこでようやくストップをかけた。


「ゆ、幸村さん、帰ろ?みんなが心配するから…」


「はい。ですが…拙者も殿や三成殿のように、あなたに触れたいと思う気持ちを抑えません。あなたがここへ残って下さるのならば、なんでもいたします」


「幸村さん…」


まっすぐすぎる気持ちが嬉しくて、今まで“お兄さん”的存在だった幸村が急に“男”に見えてしまい、差し出された手を取って立ち上がるとクロに乗った。


「…あれ?なんか船が沢山居る…。まさか…敵!?」


――高台から見えたのは、越後の港町に次々と停泊していく大船団。


その旗印は…


「…すぐに戻りましょう」


「う、うんっ」


幸村が前へ移ると桃がクロに喝を入れる。


「クロちゃん、全速力ね!」


最強の軍馬が全速力で走り出し、必死に幸村の身体にしがみつきながら春日山城の坂を駆け昇る。


あれが敵かと思うと冷や汗が止まらなくなって、クロから降りて2人で大広間へ駆け込むと…


「そんなに急いでどうしたの?」


「はぁ、はぁ、け、謙信さん…?」


――上座の謙信の前に座っていた男…


背筋を正し、長い髪を束ねた色白の男が振り返った。


…謙信に負けず劣らずの優男ぶりで、一見女子かと見紛うほどのおっとりとした表情…


「だ、誰…?」


遠回りをしながら謙信の隣に座ると、同席していた政宗や三成、左近らが一斉に同じ名を口にした。


「土佐国の姫若子だ」


「…その呼び方はやめて頂きたい」


声は男らしく低かったが、面白そうにくすくす笑っている謙信の袖を引っ張ると、ようやく本当の名を教えてくれた。


「彼は土佐の長宗我部元親。わざわざ遠回りをしてくれてここまで水軍を連れてきてくれたんだよ。さあ、君も挨拶をして」


「桃って言います、よろしくお願いします」


にこ、と笑った。
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