優しい手①~戦国:石田三成~【完】
信長がみるみる弱って行く。

覇気は相変わらずだったが、それでも高熱は下がらず、清野と床を共にする毎に病状は悪化していき、それでも信長は清野を手放さなかった。


「どうだ清野、儂と共に仇の謙信を討ちに越後へと行かぬか」


「戦など恐ろしくてとても行けません…。私はここで信長様をお待ちしております」


「愛い奴め。ならば城まで謙信の首を持ち帰ってやる」


「ありがとうございます、私の親御の魂も浮かばれることでしょう」


「明日は出陣だ。それまでは俺の傍に居ろ」


――信長を完全に骨抜きにした清野は内心せせら笑っていた。


抱かれる毎に少しずつ信長の身体に毒が回っていき、恐らく長い遠征の間にさらに症状は悪化するだろう。


後は愛する謙信に討たれるのみ。


あれ以降桃の両親が捕らわれている地下牢へは行っていない。

蘭丸が常に監視しているせいもあったが、清野を疑うような発言をすれば容赦なく信長から罵られ、物を投げつけられ、また清野も蘭丸さえも懐柔して、疑いの芽を排除することに成功していた。


「俺が留守にしている間城を頼んだぞ。戻って来たら、正式に俺の正室として迎える」


「…嬉しい…」


――思えばそんなに傍若無人な男でもなかった。


夜伽は毎回激しかったが、こちらの体力が尽きそうになると止めてくれたし、どんどん優しい男になっていった。


…が、謙信以上に優しい男は居ない。


信長には憐れみを感じているが、この男とこうして床を共にするのもこれが最期。


織田軍がここを離れれば、佐助と才蔵と協力して桃の親御を救出し、そして密かに連絡を取り続けていた秀吉の元へ連れて行って保護する。


――全てうまくいけば、きっと謙信が目をかけてくれるだろう。


それを想像するだけで嬉しくて、やわらかく微笑んだ清野の表情に燃えた信長が早速帯を外しにかかってきた。


「今宵は朝まで眠らせぬ。世継ぎに恵まれてそなたと悠々自適の暮らしを送るのだ」


体力はかなり削り取っているはずなのに、こうして毎夜離さない信長の体力には半ば尊敬を覚えた。


「必ず帰って来てくださいまし…」


首を無くした身体だけで戻って来るといい。
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