優しい手①~戦国:石田三成~【完】
桃はいつの間にか眠ってしまっていて、瞳を開けると…傍らには三成ではなく、本を読んでいた謙信が居た。


「謙信さん…」


「体調はどう?」


「元々どこも悪くないんだよ?」


起き上がるとまた何か言いそうになって口を開けた謙信の唇の前に人差し指をあてて無理矢理黙らせた。


「腰が痛いから起きてたいの」


「仕方ないなあ、じゃあ少しだけだよ」


物静かなこの男はあまり音を立てない。

頁を捲る音も全く聞こえず、静かな時間が流れて、桃は手を伸ばして謙信の膝に触れた。


「…ねえ、謙信さんは景虎さんと景勝さんと、どっちに家督を継いでもらうつもりなの?」


史実では家督争いの末、景勝が跡を継いでいるが…

桃の知っている2人は言い争いもせずむしろ仲が良いので、長い間それが疑問だったので謙信に問うと、本を閉じた謙信は桃を抱き寄せて膝に乗せると、桃の背中を撫でながら小さく息をついた。


「そうだねえ、まだ決めてないんだけど…血が繋がってるのは景勝だし、景虎はどうしても北条の子という事実があるから…まだ悩んでるよ。でも2人共愛すべき私の子には変わりないからね」


「へえ…」


「…君が私の子を生んでくれるのなら、もちろんその子に継いでもらいたいけどね。男の子だったらの場合だけど」


もし妊娠しているのなら、子供を残すつもりはない。


…共にこの時代に残るか、共に元の時代に戻るか。


2つに1つだ。


「赤ちゃんかあ…。私…まだ17なのに…」


「この時代では子を生んでいてもおかしくはない年齢だよ。桃、こっちを向いてごらん」


「え…、ん…」


優しく唇が重なってきて、優しく舌を絡められて、指先で耳たぶをくすぐられながら愛の言葉を囁かれた。


「愛してるよ。君が去ってもずっとずっと」


「…ありがとう…。謙信さんは私にはもったいないよ…」


「自身を卑下してはいけない。君は最高の女子だ。君になら、全てを捧げられる」


――腹を撫でてくれる謙信の優しい手の上から手を重ねてまた唇を重ね合う。


…2人共の子供を産みたい。

だが、時間はもう残されていなかった。
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