優しい手①~戦国:石田三成~【完】
寛大すぎる男だ。
何をも恐れず、何においても『義』を尊重し、敵であっても懐に入れて味方としてしまう――
軍神上杉謙信は義の男。
…女を愛する時もただ一心に情熱を注いで、包み込んでしまう。
――三成は傍らから黙ったまま傍観していたが、隣に座っている左近や政宗が感動していることもその潤んだ瞳から感じられた。
また泣き虫の桃も景虎にぴったりと寄り添ったまま離れず、照れ屋の景虎がようやく顔を上げて桃の腕をそっと引き剥がすと謙信に笑われていた。
「いつまで居れるの?」
「明日には発ちます。北条の態勢を整え、動かせるだけの軍を率いて合流いたします」
「この戦、敗ける気は全然しないんだ。私には毘沙門天の加護があるからね」
「そうだ、夜叉姫もついている!我らが敗けるはずはない!」
景虎の決断は皆から受け入れられて再び酒宴が始まり、まだめそめそと泣き止まない桃の手を取ると三成の隣に座らせた。
「…謙信、さん?」
「少し外の空気を吸ってくるよ」
にこ、と笑いかけて部屋から出て行き、何故かその微笑がとても儚く見えたので、桃は隣の三成の顔をじっと見つめた。
「…行って来い」
「うん、ありがと」
――まず謙信の私室に向かったが姿はなく、もしやと思い天守閣へ行くと、気配に気づいたのか、空を見上げていた謙信が振り返り、笑った気がした。
灯りもつけず、外は夜で真っ暗だったので気のせいかとは思ったのだが…
瞳にきらりと光るものが見えた気がした。
「謙信さん…泣いてるの…?」
「ふふ、泣いてなんかないよ。我が子がこの手から離れていくのが感慨深くてね。歳を取ると感傷深くなっていけないな」
「歳って…まだ20代でしょ。トラちゃんのこと、びっくりしたよ。戻っちゃうんだね。…寂しくなるね…」
「そうだね…。こうして少しずつ離れて行く者が増えると、さすがにせつないね」
…自分も離れて行くうちの1人だ。
言葉に詰まって俯きながら隣に立つと、肩を抱いて引き寄せられて、見上げるとやはり謙信の瞳は潤んでいた。
「…寂しいね」
「…ん、寂しいね」
別れは、寂しい。
何をも恐れず、何においても『義』を尊重し、敵であっても懐に入れて味方としてしまう――
軍神上杉謙信は義の男。
…女を愛する時もただ一心に情熱を注いで、包み込んでしまう。
――三成は傍らから黙ったまま傍観していたが、隣に座っている左近や政宗が感動していることもその潤んだ瞳から感じられた。
また泣き虫の桃も景虎にぴったりと寄り添ったまま離れず、照れ屋の景虎がようやく顔を上げて桃の腕をそっと引き剥がすと謙信に笑われていた。
「いつまで居れるの?」
「明日には発ちます。北条の態勢を整え、動かせるだけの軍を率いて合流いたします」
「この戦、敗ける気は全然しないんだ。私には毘沙門天の加護があるからね」
「そうだ、夜叉姫もついている!我らが敗けるはずはない!」
景虎の決断は皆から受け入れられて再び酒宴が始まり、まだめそめそと泣き止まない桃の手を取ると三成の隣に座らせた。
「…謙信、さん?」
「少し外の空気を吸ってくるよ」
にこ、と笑いかけて部屋から出て行き、何故かその微笑がとても儚く見えたので、桃は隣の三成の顔をじっと見つめた。
「…行って来い」
「うん、ありがと」
――まず謙信の私室に向かったが姿はなく、もしやと思い天守閣へ行くと、気配に気づいたのか、空を見上げていた謙信が振り返り、笑った気がした。
灯りもつけず、外は夜で真っ暗だったので気のせいかとは思ったのだが…
瞳にきらりと光るものが見えた気がした。
「謙信さん…泣いてるの…?」
「ふふ、泣いてなんかないよ。我が子がこの手から離れていくのが感慨深くてね。歳を取ると感傷深くなっていけないな」
「歳って…まだ20代でしょ。トラちゃんのこと、びっくりしたよ。戻っちゃうんだね。…寂しくなるね…」
「そうだね…。こうして少しずつ離れて行く者が増えると、さすがにせつないね」
…自分も離れて行くうちの1人だ。
言葉に詰まって俯きながら隣に立つと、肩を抱いて引き寄せられて、見上げるとやはり謙信の瞳は潤んでいた。
「…寂しいね」
「…ん、寂しいね」
別れは、寂しい。