優しい手①~戦国:石田三成~【完】
とにかく謙信の傍に居てやりたくて、景勝や兼続が景虎との最後の夜を惜しんで朝まで飲み明かすことになり、桃も途中まで付き合っていたのだがぐらぐらと身体が揺れ始めて、三成が桃を抱き上げた。


「寝かせてくる」


「君ももう行っていいよ。私の代わりに添い寝も許してあげる」


「別に貴公の許可は要らぬはずだが」


減らず口を叩いて親子だけの時間を作ってやろうと思った三成は部屋を出て、完全に身体の力の抜けた桃を部屋へ運び込むと床に寝かせた。


「…ん…、三成さん…?私…寝ちゃってた…?」


「そのまま寝てていい。謙信たちは朝まで飲み明かすそうだ」


「そっか…そうだよね。ね、私が元の時代に戻る時もそうしてくれる?その時は絶対朝まで起きてるから」


「…そんなことは考えたくない」


掛け布団を捲って隣に潜り込むと、桃が一瞬緊張したが…孕んでいるかもしれない桃を抱くわけにはいかず、ただぎゅっと抱きしめて温もりを伝えた。


そうしているうちに安心してきたのか桃がゆっくりと息を吐いて、三成の胸に頬ずりをした。


「…おい、あまりくっつくな。抑えられなくなる」


「三成さんって意外とすぐに熱くなるよね。赤ちゃんが居るかもしれないのに…駄目だよ」


「わかっている。だが好いた女子が腕の中に居るんだぞ、仕方ない」


――言った傍から顔が赤くなった三成につい桃が吹き出して、頬にキスをするとまた劇的に顔色が変わり、いつも冷静な男が動揺する様にだんだん面白さを感じてきた桃は腕に抱き着いて離れなかった。


「お、おい…む、胸が…」


「妊娠すると胸も大きくなるんだって。私のも大きくなるよね?ちょっと見てみたいな」


「元々そなたのは小さくはない。…やめろ!妙なことを言わせるな!」


――なんだか急にほっとして、三成と居ると面白くてついからかってしまう桃は身体を離して白皙の頬に触れた。


「トラちゃん…大丈夫だよね?」


「北条の血の者が今まで上杉謙信に育てられたのだ。最強といっても過言はない。心配無用だ」


「そっか…そうだよね…」


涙声になった桃を抱きしめて、瞳を閉じた。


今はそうしてやることしかできなかった。
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