優しい手①~戦国:石田三成~【完】
祈りを終えるとTシャツと短パンに着替え、待っていた幸村と一緒に中庭に下りた。


「三成さん、終わったよー!」


「ああ、わかった。クロ、行くぞ」


三成を、というよりも桃を待っていたクロが早速首を下げて桃を背に乗せると、通りがかった元親が桃に声をかけてきた。


「桃姫、どちらへ?」


「ちょっと走って来ます。あっ、元親さんはお城に残っててくださいね!」


「御意」


――本来は孕んでいるかもしれない桃を走らせるわけにはいかなかったのだが、“ちょっとだけだから”という言葉を信用して野原まで移動して桃を下ろすと、三成よりも先に幸村が真面目くさった顔で片膝をつくと注意をはじめた。


「全力で走るのはお止め下さい。後…」


「わ、わかってます、大丈夫だからっ」


軽く助走をつけるといつもよりかなりペースを落として走り出し、クロに乗った三成は先ほどの元親のことを口にした。


「元親が何故そなたに執心しているのかはわかったのか?」


「うん、なんか昔好きになった人に私が似てるんだって」


「…軽く受け取っているようだが、それが結ばれぬ恋だったならば次は全力で来るやもしれぬぞ」


「だ、駄目だよ、だって…赤ちゃんが居るかもしれないのに…」


「それを言うべきだな。俺や謙信を敵に回すと良くないことばかりが起きるぞ」


不敵な笑みを浮かべた三成にどきっとして、そんな桃にも三成は気付いていて、桃を抱きかかえると前に乗せて、桃の平らな腹に触れた。


「…宿っていればいいのに」


「えへへ、そうなると…嬉しいけど色々困っちゃうけどね。パパがどっちかわかんないし…」


「ぱぱ?父親のことか?…俺でも謙信でも別に構わぬ。全てを包み込んで、愛してやる」


「ちょ…やめてよ三成さん、恥ずかしいじゃん!」


「な、そなたこそ照れるな!俺に移ったではないか!」


――相変らず照れ屋で、きゅうっと背中から抱きしめてくれると、身を預けて城まで戻った。


「おや、早かったね」


声をかけてきた謙信は汗に濡れていて、腕を拭きながら桃の髪に触れた。


「明日は出陣だし身体を動かしてたんだ」


珍しく。
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