優しい手①~戦国:石田三成~【完】
謙信が身体を動かしているのは珍しいことだ。

珍しいことが起きているということは…明日はやはり難しい戦になるということなのだろう。


桃はじっと謙信の顔を見上げた。

謙信は“どうしたの?”という顔をしていて、自分も三成も沢山汗をかいていて、こんなことを提案するのはとても恥ずかしかったのだが…


2人の手を引っ張って道場裏の人目につかないところに連れ込むと、背伸びをして顔を近付けた。


「ねえ、一緒にお風呂に入ろうよ」


「…なに!?」


「いいねえ、賛成。じゃあ行こうか」


三成の反応は相変わらずで、開いた口が塞がらないという顔をしたので、唇を尖らせて抗議をした。


「越後に来るまでに何度も一緒に入ったでしょ?い、い、今更そんな反応しないでよっ」


「う、うるさいっ!そ、そなたがいきなりそんな提案をするからだぞ!」


「私のせいなの!?いいもん、じゃあ三成さんは入らなくってもいいよ!謙信さん、行こ!」


「待て!2人で入るなど絶対に許さぬぞ!」


結局桃に押し切られる形で3人で湯殿に向かい、謙信が次々に脱衣所で服を脱いでいて、桃が思わず目を逸らすと、ふっと空気を揺るがして笑われて、湯殿へ消えて行った。


「わ、私…選択ミスしたかな…」


「あ奴は色気の塊のような男だ。…今回だけだからな」


恥を捨てて三成もさっさと服を脱ぎ、細く鋼のように引き締まった身体をちらちらと盗み見してしまい、三成も居なくなると、ようやく桃はのろのろと服を脱いで籠に入れて、バスタオルをしっかりと身体に巻いた。


「それはないんじゃない?私たちは隠してもいないのに」


「だ、だって…」


「君の身体なら明るい所でも何度も見たことがあるよ。それは不公平だから外してもらおうかな」


長い腕が伸びてバスタオルを剥ぎ取られてしまい、桃がつい叫び声を上げると、露わになった裸体に三成が真っ赤になりながら視線を逸らした。


「け、謙信さんっ、バスタオル返して!」


「駄目。ほら早く入っておいで」


にこっと笑いながらの意地悪謙信に、2人に背中を向けながらなんとか浴槽に入り、離れた所に座ると…笑われた。


「本当に今さらだよね」
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