優しい手①~戦国:石田三成~【完】
何やらとんでもない状況になってしまっていて、1番近くでのほほんと湯を楽しんでいるのは謙信で、三成は1番遠くから…じっと桃を見つめていた。


きっとあの距離なら見えていないはず。

この時代には入浴剤はなく、湯は透明だ。

桃は必死になって膝を抱え、うずくまることしかできなかった。


「だからもう無駄だって言ってるでしょ?ああそうだ、こうしよう」


すす、と謙信が近寄ってきて、隣に座ったかと思うと膝に乗せて横向きにぎゅっと抱きしめてきた。


「きゃ…っ」


「謙信公、それは抜け駆けだぞ」


「提案した者勝ちじゃない?桃、こうすれば私にも三成にも裸を見られないでしょ?」


顔を上げると、いつも優しい柔和な笑みを浮かべているはずの謙信の瞳にはどこか意地悪気な光で満ちていて、桃はぴくりとも動くことができなくなった。


「で、でも身体がくっついてるし…」


「うん、だから私が昂っていることにも気付かれちゃうよね」


「ちょ、け、謙信さん、離してっ」


「どうして?三成が居るんだしここで抱こうとは思ってないよ」


「…謙信公、桃を渡してもらおうか。貴公がしたことは俺もする。そういう約束だったな?」


――今度は三成が腕を伸ばしてきて桃を腕に抱き込むと謙信から離れた。


「み、三成さん?」


「どこか触られなかったか?…………も、桃、胸が…あたっている!」


「!だって仕方ないでしょ!?自分で隠すから離してっ」


「駄目だ、またあの色ぼけがそなたに触れようと近付いて来るぞ。…お、俺が隠しておいてやる」


「色ぼけとは失礼だなあ、好いた女に触りたいと思うのは当然のことでしょ」


――濡れた前髪をかきあげ、オールバックになった謙信はいつもとはまた印象が違って、つい桃が俯いてしまうと、背中に回った三成の腕に力がこもってぎゅっと抱きしめられて、顎を取られた。


「謙信を見るな。そなたを抱いているのは俺だぞ」


「三成さん…んっ」


湯に浸かって桃色に染まった艶やかな桃に三成が唇を重ねると、早速謙信から抗議の声が上がった。


「私もするからね。平等に、でしょ?」


…とんでもない状況に。
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