優しい手①~戦国:石田三成~【完】
その後三成や政宗、元親などが入れ替わり立ち代わり挨拶に来てくれたが、桃を最も喜ばせたのは茶々との再会だった。


「桃姫、お加減はいかが?」


「茶々さんっ!うん、いまはかなり楽だよ。心配してくれてありがとう」


桃がはにかむと茶々は部屋の隅に座っている幸村に目配せをして退出させた。

そんな2人にも気づかず桃が蜜柑を頬張っていると、茶々は傍らに座って先程謙信から明かされた事実を口にした。


「身籠っているのですから酸いものを食べたいでしょう?食べればかなり楽になると聞きましたから」


――そんな茶々も未だ秀吉の子を懐妊していない。

求められていることは知っているし、幾度となく夜伽を交わしてはいるのだが…


「…まだわかんないけど…でも蜜柑は美味しいよ。茶々さんも一緒に食べようよ」


…出会ったころと何ら変わらずに、“姫”という立場にある自分に親しくしてくれる桃の存在は茶々にとっては喜ばしく、また三成が記憶を失ってまでも傷ついた身体を引きずって越後へ向かわなければならないほどに欲した女子――

今はもう羨ましくはない。


桃が身籠っているのであれば、三成の子であってほしい、と切に願っていた。


「あのね、謙信さんがすっごく茶々さんのこと誉めてたの。政宗さんや元親さんもだよ。茶々さんは本当に綺麗だもんね」


「ふふふ…美しいものを着て化粧をして着飾れば女子は誰だって綺麗になれます。桃姫…髪が伸びましたね」


肩を越えた長さにまで伸びた桃の髪に手を伸ばして触れると、桃が心底ほっとしたように息をついた。


「桃姫?」


「…相談できる人が居なかったの。茶々さん…私の今までの話…聞いてくれる?聞いてもらいたいの」


一時期ではあるが目が見えなくなったこと…

謙信に惹かれたこと…

三成が居なくなったこと――


今までは誰にも話せなかった。


茶々には全て聞いてもらいたい。


「ええわかりました。桃姫さえよろしければ夜通し話しましょう」


「ほんと!?ありがとう茶々さん!大好き!」


無邪気な桃にもうしばらく会っていない妹たちの姿を重ねた。
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