優しい手①~戦国:石田三成~【完】
桃の両親たちや軍議という忙しい時間の合間に謙信が桃の部屋を訪れると、中からはとても楽しそうな声が聴こえた。


「でね、謙信さんったら…」


「ふふ、あのように端正なお顔をされていてもそういう一面もあるのですね」


…どうやら自分の話をされているらしく、思わず立ち聞きしそうになった時…


「盗み聞きは義に則っているのか?」


背後から三成にそう非難されて肩を竦めながら首を振った。


「いいや、違うけど…じゃあ盗み聞きするのはやめてお邪魔しようかな」


止める間もなく謙信が襖を開けると、突然の乱入に驚いた2人がぽかんとした顔で見上げてきた。


「け、謙信さん!!」


「おや、そんなに驚いてどうしたの?何か込み入った話でもしてた?」


桃と茶々が顔を見合わせた後…吹き出した。


「ふふふっ、ううん、なんでもないよ。今ね、色々お話してたの。今までのこととか」


「へえ、ぜひ私も加わりたいなあ。三成もそう思うでしょ?」


女子の会話に平気で参加しようとする謙信を見たこともないものを見るような目で見た三成は桃の傍らに腰を下ろすとほんのり顔を赤らめた。


「俺は口出しはせぬ。…聞くだけだ」


「むっつり」


謙信に詰られつつ睨み返していると、茶々が袖で口元を隠しながら笑った。


「三成…表情が豊かになりましたね。傷も癒えてほんに喜ばしい」


「…その節はご迷惑を。傷も癒え、記憶も取り戻し、何も問題はありませぬ」


「茶々さん、三成さんの胸にね、すっごい傷がついてるの。私の時代だと治せるかもだけど…こっちじゃまだ医療が発達してないから無理かな」


桃が時々現代の話をする時があるが、そういった時三成は決まって黙り込む。


だが謙信はお構いなしに女中が運んできた茶を口にしながらにこやかに笑ってみせた。


「背に太刀傷を浴びるよりは喜ばしいことだよ。ちなみに私は太刀傷など浴びたことはないんだけどね」


「…うるさい」


三成が憮然と言い、3人が笑った。
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