優しい手①~戦国:石田三成~【完】
茶々が三成を盗み見し、母が謙信を盗み見る。


…2人とも誰もが振り返るような綺麗な顔をしているのだから当たり前なのだが、何故か誇らしい気分になってにこにこしていると、ゆかりがこそりと耳打ちをしてきた。


「あなたはどっちの方が好き?どっちが上?」


「え…っ!?そ、そんな…順位なんかつけらんないよ…」


常に冷静だが、すぐに熱くなってわかりにくい優しさの三成。

常に柔和だが、時に放置しては優しくを繰り返す謙信。


2人共とも全くタイプが違うので選べるわけもなく、だからこそ選んだ決断。


桃はこそこそを話すのをやめて、三成と謙信の前で言ってのけた。



「2人とも大好きなの。だから赤ちゃんができたのは…嬉しいの。2人には悪いけど…どっちの赤ちゃんでも私は嬉しいの」


「私だって同じ気持ちだよ。君の時代では私は生涯独り身のようだけど、子が出来たかもしれない喜びを今感じている。…本来は感じることのできなかった喜びを与えてくれたのだから、君には感謝しているよ」


「…俺も同じだ」



あまり多くを語らない三成が謙信に同意し、三成もまた今後自分が居なくなった後は独り身を貫く覚悟であるのが窺えた。

…それは歴史とは違う。

違うけれど、もうこれ以上口出しをするのをやめた。


「桃姫…あなたがここに残ってくれたらわたくしも嬉しいのですが…考え直してもらえませんか?」


「うーん…お父さんとお母さんにも会えたし…どうやったら戻れるかがわかったら…私…」


その時――

また突然吐き気が襲ってきて激しく咳き込むと、謙信が桶を引き寄せて背中をさすった。


「長く話すのはよくないね。桃、横になりなさい」


「うん…ごめんね…」


「私たちは近くにある別室に居るからあなたはちゃんと休みなさい。寂しくなったらいつでも呼ぶのよ」


長く会えなかった母とまだ一緒に居たかったのだが、身体がそれを許してくれない。

悔しくて涙が滲んできたが、三成と謙信が代わる代わる手を握ってくれて安心すると、茶々とゆかりに手を振った。


「また後で呼んでもいい?」


茶々もゆかりも、三成と謙信もすぐに頷いてくれた。
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