契約恋愛~思い出に溺れて~
「デート?」
「ああ、まあ。この子が娘さん? へぇ、初めて見た。可愛いね」
英治くんは、一緒にいる彼女のことはサラリとながし、紗優に目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
紗優は一瞬驚いたように、目をパチクリさせる。
「おじさん、だれ?」
「おじさんは、ママのお友達。紗優ちゃんだっけ。こんにちは」
「こんにちは。ねぇ、イルカのショーがはじまるの。サユみたいから」
「ああ。そうだね。もうすぐ始まるねぇ」
英治くんは紗優の頭を撫でてにこにこしている。
紗優はイルカが気になるのか、もう水槽の方に目をやっている。
私は、そのことよりも、放っておかれてる彼女さんの方が心配だった。
「あの、英治くん。紗優の事はいいから。ほら、デートでしょ。楽しんできて」
「あー、紗彩ちゃん、今日の夜って暇?」
「はぁ? 忙しいです。見れば分かるでしょう。今日は家族サービスデーよ」
彼女を前になんてことを言いだすのだろう。
英治くんは気が回るようでいて、この辺りは無頓着なのかしら。