契約恋愛~思い出に溺れて~
電車に揺られると、あっという間に水族館についた。
紗優は終始ご機嫌で、カクレクマノミやエイを見ては大騒ぎする。
水のある景色を見ると、やっぱり海を思い出す。
ユウが愛した海。
海もユウを愛していたのかもしれない。
だから私から、ユウを奪っていってしまった。
イルカのショーが行われるというアナウンスが入ると、私の手を引っ張って駆け出した。
「ほらママ! イルカショーみたい!!」
前から5番目の席を陣取り、紗優は目の前の水槽を楽しそうに眺めていた。
私も何の気なくそれを眺めていると、後ろから声をかけられた。
「あれ、紗彩ちゃん?」
「え?」
振り向くと、英治くんがいた。
「英治くん?」
意外な人と意外なところで会うものだ。
彼とは夜のバーでしかあったことが無いから、こんな陽の下でみるとまるで別人みたいな気がする。
そして今、彼は女の人と一緒だった。
ウエーブのセミロングが似合う若々しい女性。
つややかなグロスがついた唇が妙に目立って、彼女の女らしさを際立たせる。