契約恋愛~思い出に溺れて~
英治くんは、ただにこりと笑うと背すじを伸ばすように腕をあげた。
「俺、欠陥品なんだよね」
「はぁ?」
「人をちゃんと好きになれないんだ。じゃあまたね、紗彩ちゃん」
ひらひらと掌をふって、英治くんは背中を向けて歩いて行った。
何だか良く分からない。
英治くんは、初めて会った時からどことなく掴みどころがない気がする。
「ねぇ、ママ。はじまるよ」
「あ、そうね。楽しみね」
紗優に呼ばれて、イルカを見る。
水しぶきが太陽の光を浴びて綺麗だ。
水のある景色はユウを思い出して、私の胸は少し軋む。
けれど、紗優は好きみたいだ。
動物園よりは水族館の方を好む。
血のつながりって侮れないと密かに思いながら、嬉しそうな紗優の笑顔に目を細めた。