契約恋愛~思い出に溺れて~
その時、携帯電話が揺れた。
夜は音を消している。
私は布団からそっと出て、電話を取った。
発信者は『西崎達雄』になっている。
「はい。もしもし、達雄?」
『あ、紗彩ちゃん?』
返答の声は達雄のものではなかった。
驚いて一瞬息をつまらせると、柔らかい笑い声が聞こえてくる。
『驚いた? ごめん。葉山です。達雄ちょっと飲み過ぎちゃってさ。彼女でしょ? ちょっと助けに来てくれない?』
「英治くんなの? 助けにってどういう……」
そんなことを言われても、今の時間から出て行くのも億劫だ。
『ちょっと飲ませすぎちゃったんだよね。頼むよ、紗彩ちゃん。それともまだ紗優ちゃん起きてるの?』
「そうじゃないけど……」
迷いつつも、放ってはおけないような気もして会話をしながら身支度を整えた。
全く。
達雄は年上とは思えない。
私は一つ溜息をついて答えた。
「わかった。どこで飲んでるの?」
『Hellebores。タクシーでおいでよ。そこはおごってあげる』
「お気づかいどうも」