契約恋愛~思い出に溺れて~
その時、掠れたような声で達雄が呟いた。
「……アヤ……」
それが誰を呼んだものかなんて、考えなくても分かった。
私じゃない、彼の大事な女の子。
そこまで好きなのに自分を抑え込む達雄が、どうしようもなくけなげに思えて、私は彼の髪に手を伸ばして頭をなでる。
それを見ていた英治くんが、私に座るように促した。
「今日は妹が彼氏とデートなんだと」
「へぇ。そうだったの」
「それでこの状態」
「……仕方ないわね」
私の苦笑いに、英治くんは片眉をあげる。
彼はしばらく私の顔をじっと見つめた後、ウィスキーと思われる液体を一口含んだ。