契約恋愛~思い出に溺れて~
「……っ、いけない?」
「別に。ただ未来が無いなと思う。どれだけ一緒にいても、違う方を向いてるんだ。変化も起こらなければ何かを生み出せるわけでもない」
「……」
「ただ、時を過ごしているだけだ」
英治くんはステージの方に視線を向けた。
技巧的なギター演奏。
ピアノ演奏の時と違って、なんだか妙に胸がはやる。
英治くんの言葉は、……正しい。
けれども口を出されたくないことでもあった。
「女の子をあんな風に冷たくあしらう人に言われたくないわ」
「今日のこと?」
「そう」
「頼まれたって言ったじゃん。彼女ね、一週間前に振られた彼氏があそこで働いてんの。見せつけてやりたいって言われて付き合ってやっただけ」
「何よそれ!」
「だから疑似恋人。もちろん頼まれれば体の関係だって引き受けるけどね。
紗彩ちゃんには責められないんじゃないの? 同じことしてんじゃん」
「……っ!!」
確かにそうだ。
自分はあんなに達雄との関係を正当化していたくせに、人がやっているのには文句つけるなんておかしい。