契約恋愛~思い出に溺れて~
私がじっと見ているのを不思議に思ったのか、綾乃ちゃんは不審そうな声を出した。
「……なんですか?」
「いいえ。何でもないわ。
ごめんね、遅くに。でも、他に行くとこも無いものだから」
「紗彩さんの家は?」
「私の家は駄目なの。
かといって私も帰らなきゃいけないから、いつまでも付き合う訳にもいかないし」
私の言葉を静かに聞きながらも、
彼女はゆっくり絞り出すように声を出した。
「紗彩さんは、お兄ちゃんと結婚しないんですか?」
その質問に、私は驚いた。
呆れた。
私に子供がいることさえ、あの人はこの子に教えていないんだ。
「達雄から、何もきいてないのね」
「え?」