契約恋愛~思い出に溺れて~
「母さんが入院してる今、俺にとっても綾乃にとっても家族といえるのはお互いだけなんだ」
「……」
「天涯孤独だなと思う時の気持ち、わかるか?
ものすごく心細い。
俺は養子に迎えてもらって大事にしてもらった。
それでも、この人たちは俺の本当の家族じゃないと、そういう思いをずっと抱いてきた」
「達雄」
「でも綾乃だけは。生まれた時からずっと一緒にいる綾乃だけは違う。特別なんだ。俺たちは2人で助け合ってきた。綾乃がいなかったら、俺はもっとロクデナシになってる」
達雄の瞳が潤む。
「綾乃にとっても、今現在頼れる家族は俺しかいない。母さんは、精神的に病んでる。綾乃を支え切れない」
愛しいと、その瞳が言っているのに、口から出てくる言葉はそれを押さえつけるような言葉ばかり。
「それに、俺は恋愛を信じ切れない。
そういう関係になって上手くいってるうちはいい。
だけど、いつかぎくしゃくして別れた時を考えると怖いんだ。
一度そうなってしまったら、もう戻れない。家族関係を失った俺たちには帰る場所が無い」
「達雄」
「それが怖いんだ。綾乃を失いたくない。家族を失いたくない」