契約恋愛~思い出に溺れて~

「紗彩ちゃん、落ち着きなよ」

「英治くん」

「達雄も、ちゃんと素直になれよ。
紗彩ちゃんにここまで言わせて、それでもまだ認めないつもりなのか」

「英治」

「お前は妹のことが好きなんだよ。失いたくないのなら、兄妹のままでいるんじゃなく、ちゃんと自分の気持ちを伝えるべきだ」

「……」

「妹が結婚するその式場で、お前は本気でおめでとうなんて言えるのか?」


英治くんの言葉に、達雄は絶句した。

それでも、今だ答えを見つけられないように目を伏せて、頭を垂れる。


「……どうしたらいいんだよ」


途方にくれたような呟きは、痛々しくもあった。

私は、残っていたカクテルを飲みほした。


「……帰るわ」

「紗彩」

「私が一番あなたの気持ちがわかるはずよ。
綾乃ちゃんを失った後、あなたが得るのは今の私みたいな虚無感よ。
もう手に入らない人を想い続けるのがどれだけ辛いか、あなたに分からない訳じゃないでしょう」

「……」

「しっかりして、達雄」


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