契約恋愛~思い出に溺れて~
私は休憩するためにコーヒーを買い、携帯電話を眺めた。
今日も紗優からのメールが来ている。
英治くんに遊んでもらって、あの子も少し落ち着いた気がする。
多分、忙しい私にずっと遠慮していたのだろう。
あんなに小さいのに、私のことを気遣っていてくれたんだと思うと、嬉しいやら申し訳ないような気分だ。
英治くんには、そのお礼もちゃんとしなきゃいけないのだけど。
『今度は紗彩ちゃんから誘ってね』
あんな風に言われてしまって、自分から誘っていいのか分からない。
誘ったら、気があるって思われる?
それに、また会ったら、どんどん引きずり込まれる気がする。
英治くんに対する感情は、ユウの時と似ている。
自分の意志とは無関係に、引き付けられる。
だけど、英治くんは別に私が好きな訳じゃない。
疑似恋愛が出来るのだと、自分で言っていたし実際にしてもいた。
私が一人になったばかりだから、あんな風に言ってきただけだ。
本気にはなりたくない。
ユウを忘れたくない、というのと同時に、
好きになったら終わりになるような恋愛に、踏み込む勇気なんかなかった。