契約恋愛~思い出に溺れて~
「……それにね。
父親の事を、思い出してくれたの。
二歳の時に死んで、覚えてなくても当たり前だった。
だけど私が、しつこいくらいに話してたから、覚えてないって言えなかったんだと思う。
でもこの前、英治くんと会ってから、パパはあんな風だったよねって」
思い出すだけで、涙が出そう。
紗優はあの時、安心して笑ったのかも知れない。
無意識にあの子に対してプレッシャーをかけていたことに、今頃気づく。
「私も、……嬉しかった」
自分の気持ちまで言葉に出したら、何だか妙に恥ずかしくなった。
目を合わせられなくてうつむいていると、からかうような声が聞こえた。
「へぇ、素直だね。紗彩ちゃん」
「え、や、いや別に!」
「その方が可愛いよ」
「なっ……。可愛いなんて年じゃないわよ」