契約恋愛~思い出に溺れて~


「……もういい」


そのまま、電話を切り、電源までも切る。

化粧室に入って、涙目になっている瞳をなんとかしたくて、指先に水をつけて濡らした。


「嫌だ、もう」


力が抜けてく。

ずるずると崩れ落ちそうな体を、理性の力でなんとか立たせている感じだ。

どうしたら昔の私に戻れるの。

英治くんを好きになる前の、なんとかでも一人で立ててた自分に。

ユウの事を支えにして、紗優と二人頑張ってた自分に。


鏡の中の自分が、情けないほど心細そうな顔をしてこちらを見ている。


「……」



……戻れない。

ささやかだけど優しい彼の態度が、私と紗優をどれ程助けていてくれてたのか、痛いほどに思い知る。


唇を噛んで、鏡の前で表情を整える。

まだ仕事中で良かった。

でなければ、本当に泣きだしてしまうかも知れないもの。


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