契約恋愛~思い出に溺れて~
そうして、季節は三月に入った。
仕事は慌ただしさを増し、お陰で仕事中はなんとかなっている感じだ。
「横山さん、ここのチェックお願いします」
「あ。ハイ」
青柳くんの持ってきた書類に目を通す。
彼が設計を担当した初めての仕事の、相手先に渡す仕様説明書だ。
彼は以前私が言った言葉をちゃんと聞いていたのだろう。
当初食い違っていた部分もきちんと直っている。
「うん。良いわよ。
そうね、ここがちょっとわかりづらいかも知れないわ。
私たちは専門家だからこの書き方でも分かるかも知れないけど、相手先の方はユーザーであり、細かい事までは分からないでしょう?
もう少しユーザー目線まで落としてくれたらなおいいわ」
「分かりました!」
きびきびとした返事で、青柳くんは書類を受け取る。
そして、じっと私を見るとぺこりと頭を下げた。