契約恋愛~思い出に溺れて~
それからの日々は慌ただしかった。
納期前の動作テストに予想以上に時間がかかり、終電間際まで仕事の日々が続く。
夜に英治くんが電話をくれても、まだ仕事中という時が多く、まともな会話も出来ない。
紗優とも一緒にいる時間が少なくなり、自然に会話も無くなる。
「おはよう」
「行ってらっしゃい」
それだけを言う存在になっている自分が、どうしようもなく情けない。
その週の土曜は、他の社員は休日出勤をしているほど忙しい。
それでも、卒園式だけは別だ。
私は朝からスーツを着込んで、紗優の晴れ姿を見に行った。
いつものようにツインテールに結って、まっすぐ前を向く紗優は、やっぱり子供なんだけど一回り大きく見える。
入園した時は何にも分かってなかったのにって思うと、何だかすごく感慨深い。
式には年長児と、在園児の代表として年中児が参加していた。
式が終わってそれぞれの教室にうつると、卒園児は先生とお話しその後謝恩会へとうつるのに対し、年中児はお迎えに来た家族と共に帰る。