契約恋愛~思い出に溺れて~
二人きりのときって。
絶対、二人以上でいるときの空気と違う。
呼ばれる名前にこんな風に心が浮つく事はないし。
「どうしたの」
こんな風に頬に触れられたりだってしない。
大きな手はさっきまでマグカップを持っていたから過度に温かくて、触れられた頬が火照る。
「え、英治くん」
他に誰かいる時は、自分の唇からこぼれる声はこんなに震えたりしないし。
こんな風に涙目になったりもしない。
「一緒にいて欲しくて」
「え?」
「今日やっとね、思えたの」
「何を」
「ユウは、私を責めないって」
「……」
「幸せになれって言ってくれるはずだって」
ユウが死んでからは、ずっと我慢することの方が多くて。
誰かにこんな風に、自分の気持ちを素直に伝えた事がない。