契約恋愛~思い出に溺れて~


だから、本当はすごく怖いんだけど。

どうしても、この距離を縮めたくて。


この一歩を。

自分から踏みだしたいから。


「だから、今夜は英治くんと居たい」

「……紗彩ちゃん」


目を見開いて。

向かい合わせになっている彼は息を飲む。

私は爆発しそうな心臓に、呼吸さえも不定期になる。


はあ、と息を吐き出した途端に、彼の掌が私の顎を上げて。

次の瞬間には唇が重なっていた。


「……んっ」


紅茶の香りがする。

思いの外やわらかい唇が、角度を変えて何度か私のそれをふさぎ、

舌が探るように唇を濡らす。

やがてゆっくりと侵入してきたそれに、眩暈がしそうなほど翻弄される。

キスなのに。

キスだけなのに。

全身の力が抜けていく。

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