契約恋愛~思い出に溺れて~
「じゃあ、紗優ちゃんが間ね。片手は荷物持たなきゃいけないから」
英治くんは右手に荷物を持ち、左手で紗優の手を握る。
離されてしまった私の手は、紗優が代わりに握ってくれた。
だけど、3人で並んで歩くと、人の多いホームではちょっと邪魔だ。
私は紗優にそう告げて、手を離して2人の後ろを歩いた。
紗優と手を繋ぐために、少し体を曲げている英治くんの横顔は、いつもよりちょっと不安そうに見える。
どんな人なんだろう。
私もドキドキする。
彼の母親。
……彼を捨てた人。
改札をくぐる前に、彼の動きが止まる。
「おじちゃん?」
サユが、不思議そうに彼を見上げた。
私は、ただ無言で立ちつくす彼の視線の先を探した。