契約恋愛~思い出に溺れて~
「紗優。あの人、英治くんのお母さんなんだって」
「ふうん」
私は、敢えて紗優に話しかけた。
紗優は、キョトンとして、英治くんとお母さんを見比べている。
「すごく久しぶりに会うんだって」
「へぇ。そうなんだ。どのくらいひさしぶり?」
無邪気に問う紗優に、英治くんはしゃがんで目線を合わせる。
「……紗優ちゃんより小さいころに別れたきり。よく覚えてないんだ」
力ない笑顔が頼りなく見えて、私は彼の肩に手を添える。
「そんなに?」
「うん」
「じゃあ、うれしい?」
まっすぐな紗優の眼差しから、彼は目をそらして私を見た。
「……どうかなぁ」
ぼそりと呟いた、小さな声。
まるで迷子になった小さな子供みたいに思えた。