契約恋愛~思い出に溺れて~
「英治」
「もう俺の事は気にしなくてもいいよ。親父だってもういい年だろ」
「何を言うか。私はまだまだ現役だぞ」
「分かってるよ。でももう、俺はいい。自分の力で紗彩たちを守りたいんだ」
お父さんは英治くんをまじまじと見て、少し寂しそうに笑った。
「なんか、寂しいものだな」
「親父うっかりしてるけど、俺が結婚するって事は孫ができるんだぜ?」
お父さんは一瞬キョトンとし、その後納得したように頷いた。
「ああ、そうだったな。今度一緒に連れて来てくれ」
「うん」
「今度からは孫に小遣いをやれれるんだな」
穏やかな微笑みを浮かべる彼からは、決して愛情がなかったわけではない事が窺える。
この人は愛情がない人なんじゃない。
ただ、ほんの少し伝え方が下手なだけなんだ。