契約恋愛~思い出に溺れて~


「乾杯」


グラスはカチンと音を立て、私のだけが中ほどまで減っていく。

以前は誕生日を迎えるたびに、泣いてばかりいたけど。
今年は少し違う気分だ。


「あなたに会えて良かったよ」


あなたに出会う以前の自分よりも、あなたに会えた後の自分の方が好き。

あなたを失って泣いてばかりだった自分よりも、今の自分の方が好き。


「ちゃんと、幸せだよ」


私の呟きだけが響く部屋。

ユウからの返事は、ある訳がないのだけど。

何だか二人で話をしている気分だった。


もう、泣かないでも話ができるね。

大丈夫よ。

英治くんは、紗優の事、きっと大事にしてくれる。

紗優もきっと、あなたの事忘れない。

私も、忘れないから。


だからずっと、笑っててね。

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