契約恋愛~思い出に溺れて~
そして土曜。
紗優は出勤する私に、寂しそうな笑顔を見せた。
「いってらっしゃい」
「ごめんね、紗優。折角のお誕生日なのに。
でも、今日は英治くんが遊びに連れて行ってくれるって。
後で迎えに来てくれるからね」
「うん。……ママは、いつ帰ってくるの?」
「夕方かな。また電話するからね」
「うん」
プレゼントのおもちゃを先に渡してそう言っても、元気のない紗優が気にはなった。
だけど、もう時間もない。
土曜だと地下鉄のダイヤが変わるので、早めにでないといけない。
「ごめんね。行ってきます」
急いで家を飛び出し、駅まで歩く。
パンプスの音に、何だかせきたてられてるような気持ちになりながら。
何かがどこかずれてる。
そう思うのに、その何かが分からない。
結局は忙しさにまぎれて、考えることさえ出来なくなる。