契約恋愛~思い出に溺れて~
携帯電話を片手に、私は地下鉄へと向かった。
『もしもし』
「あ、紗彩です。今仕事終わったんだけど」
『今サユと映画観終わったところ。これからメシ食うから、一緒に食べよう。迎えに行くよ』
「うん。出来るだけ近くまで行くわ。どこの映画館?」
待ち合わせ場所を決めると、英治くんはすぐに電話を切った。
何だか突き放されたような気になって、急に寂しくなる。
なんでこうなるんだろう。
何かがやっぱり変。
久しぶりにゆっくり会えるんだから、ちゃんと話さないと。
何の話をしよう。
今日見てきたっていう映画の話。
マンションの話。
式の話。
英治くんの仕事の話も、最近ゆっくり聞けてない。
何でもいい。
話をして、目の前で笑って欲しい。
傍に居て体温を感じて、安心したい。